憧憬
Lucy

 

群れを離れたコヨーテなら
後足の
仕留め損ねた獲物に嚙まれ
血を流し続ける傷など舐めるな

私はお前の獲物ではない
まして谷底の
河原の土に掘られた巣穴に
敷かれた生暖かい毛皮ではない

遠い岩山に谺する
孤独な野生の咆哮に
憧憬の耳を欹てる兎

切り立つ崖縁に前足を揃え
長い尾を垂れ
慄きに堪え
お前は
闇に鋭い弧を描き
研ぎ澄まされた黄色いやいばを恋い慕い
声を振り絞って吼えろ


自由詩 憧憬 Copyright Lucy 2019-01-15 18:47:36
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