夜メバル乗り合い船にて
北村 守通

細い
溝のような水路から
船に乗せられ
どんぶらこっこ
どんぶらこ

狭くて
広い
黒い
ダンジョンの様な海
初めての
魚を求めて
どんぶらこっこ
どんぶらこ

青イソメの
頭を狙う
針の先
かわして
指の先
狙って音立てる
青イソメの
鋭い口ばし
なんとか交わして
チョンがけし
なんとか交わして
チョンがけし
なんとか終わって
投入し

空に星はない
陸の光はどこかしら
後ろからの
船の光が
眩しすぎる

  これが東京湾か
  これが夜の乗合船か

興奮のあまり
イソメをさんざんもてあそんだ
指先を
洗うことも忘れて
握り飯を手に取る
その味が
脳に伝わる前に

  来る
  来た
  き
  来た
  来た

竿先といわず
竿尻にも
東京湾の
魚の
生体反応が
伝わってきた

  これが
   これが

  これが
   これが

  夜の東京湾なのだ



自由詩 夜メバル乗り合い船にて Copyright 北村 守通 2019-01-14 21:33:32縦
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