ミルクの祭典
atsuchan69

冬のあいだ降りしきる雪に閉ざされた最果ての地マンタに住む人々は、春の日を心待ちにしている。そして世界の終わりへとつづく分厚い氷壁前の広場では、毎年二月の初めにエロスを迎える祭り、オナ・フェラペリアが行われるのだ。このときに欠かせない儀式が、生暖かい液体――男性そのものの(むにゃむにゃ)液――のかけ合いである。仮面をかぶり、下半身を(むにゃむにゃ)させた大勢の男達が老若男女を問わず奮い立った「うまい棒」を見せびらかし、勢いやって来ては粘りのある(むにゃむにゃ)した【聖水】を顔や服に飛ばす。このオナ・フェラペリアは別名ミルクの祭典とも呼ばれ、夜になると村じゅうどの家でもその名のとおりミルクを使ったシチューや粥を食べる。

オナ・フェラペリアは「男性を男性たらしめる根源の儀式」と考えられていて、女性にあっては子宝に恵まれるという意味合いを持っていた。祭りの最後には、冬を象徴する悪魔のワラ人形「サムサム」を燃やし、村じゅうみんなで歌舞音曲を楽しむ。こうしてオナ・フェラペリアが終わると、次は【希望祭】がやって来る。春を待つ希望祭までの期間は忍耐を要求され、贅沢な乳製品と卵を食べることが禁じられる、だからマンタの人々にとってオナ・フェラペリアの日にミルクを使ったシチューや粥をおなかいっぱい食べるのは、一年のうちでとても楽しみなことの一つなのだ。

そして二月三日。東洋のある国でもライスを海苔で巻いた太い棒状のスシを男性器とみなして、口いっぱいに頬張りながら食べ、無病息災を願う。


自由詩 ミルクの祭典 Copyright atsuchan69 2019-01-12 11:09:46
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