清潔な皮に切れ目を入れて引き剥がしたらそいつは立派な肥溜だったよ
ホロウ・シカエルボク



あてがわれてあてが外れてもごった返す人の波のなかで
奇をてらわず気を付けて精進なによりも大事社会のルール
自発性すら指示されるままにほのかに微かにちらつかせるだけで
お手本に沿って律義に真面目にプロセスをこなす自分を信じて
シュプレヒコール、そいつが無ければ、昼に食うものも決められねえ
給料明細肩書が無ければ威張り散らせる根拠もねえ
自分のなかになんにもねえから他人のことがやたら気になり
吊るし上げるか引きずり落とすか女の腐ったようなやり方で
声は小さく視線は避けてそれでも伝える些細な悪意

俺はあるとき考えた、なぁによくある考え事さ、「生きものとしての種類が違う」「目指すべき場所がまるで違う」実際にはありもしない金字塔を、強固なエゴででっち上げて、ただただ勝つための愚かしい一点張り、ゴリ押し前提の火薬のない砲弾、ボンボン飛ぶ、ボンボン飛ぶ、命中させる技術なんかないから、弾がある間はやたらに撃ちやがる、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる?

「下手な鉄砲なんか当たるこた無いんだよ」

なにが不安なんだ、そんなに牙を剥いて、なにが怖いんだ、そんなにムキになって、お前のやりたいことはだいたいわかってる、でもそんなもんに乗っかってる時間はないんだ、お前の信じてるものに則ったところで、大した人間になんかなれないことはソコラヘン歩いてる連中が証明してくれてる、攻めに出るのは守ることを知らないって告白してるようなもんさ、恥ずかしいんなら口を閉じて、課題図書でも読んでみることだよ、駄々をこねてもお前のスキルがあがることなんか一生ないぜ

シニカルさやニヒルさや、ちょっと懐かしいゼロ・ゼネレイション
要は一歩後ろに下がって、恥かかない為の秘策でしょ?
ちょっと変わったことに手を出して、笑われるのが怖いだけでしょ
勇気がないなら勇気がないって、いっそ宣言しちゃえばどうだい
他人に誇るようなアイデンティティ、ひとつもないってバラしちゃいなよ
貨幣価値みたいなもんを信じてれば確かだって
どうせならいっそのこと、希薄な自分を誇っちまいなよ

寒くなりましたね、物凄い数の人間が、ウルトラダウンやベンチコート着て歩いてます、ツーブロックの男性も増えました、流行ってるからってよくあんな髪型にするよな?個人的には腰パンぐらい恥かしいですよ、アレ、よく知りませんけど読モってんですか、そんなでもないルックスの小娘が簡単にカリスマと呼ばれる時代、僕らおっさんにとっちゃカリスマなんてあれだよ、マーク・ボランとかビル・ロビンソンのことだったよ?まあそれはともかく、近頃の若い娘の流行なんてただただ派手なだけだよね、派手で騒がしいもんばっかり、コピーのような連中が歩行者天国を歩きながらコスプレしてる無邪気なやつらを鼻で笑ってる、ねえ、だけど彼ら、ネットじゃちょっとした人気者で、ファンクラブだってあったりするんだぜ、君は彼らほど人に好かれてたりするかい?ああそう、もちろん、それは嘘の好きかもしれないよね、だけど数でどうこうしようとしたりするのは、君らの専売特許じゃなかったかなぁ、わからないかなぁ、愛されるのははみ出してる連中だってこと、そう言う連中がつまり、文化ってもんの本当のところを担っているって俺は思うんだよね、まあ、そんなことはどうでもいいんです!テンプレでいいやつらに思考の枝葉の話をしてもしかたがないでしょう!

もう数字になる話しか信仰になり得ない、どこを見てもそうだ、内容よりも先に発行部数の話をしてる、いくらで売れる、いくらになる、あれ売れてるから真似しよう、うまくいけばおこぼれ貰える、雨後の筍野性のドングリ、あちらこちらでゴロゴロゴロゴロ、ミステリなんて特にひどい、「ラスト五ページ、衝撃のどんでん返し」なんて帯に書いてる、できればどんでん返しのことは黙っておいてくれよ、こうすれば食いつくから、こうすれば目を引くから、肝心なことはどんどん疎かになっていく、もしもそれが食いもんなら始めっからもう腐って糸を引いてるに違いないんだ

虚勢を張り過ぎて誇るべきものを忘れました
守りに徹し過ぎて守るべきものを失くしてしまいました
人を殴り過ぎれば一番最初に壊れるのは自分の拳です
戦いを避けながら卑屈に戦ってる真似だけして
仲間が二、三人居るだけでまるで天下を取ったかの態度だ

あいつらの一見小奇麗な皮に小さなナイフで切れ目を入れて、一気に引き剥がしてみたらそいつは立派な肥溜だったよ、まったくひどいもんだ、蓋が古くてひび割れだらけで、臭いを塞ぐ術がない、そりゃもう物凄い臭いだったさ、たいていの人間が鼻をつまんで逃げだした、だけどそんな騒ぎのなかに、平気な顔して立ってるやつが何人か居たんだ、あはーんと思ったね、俺はハンマーを手にして、そいつらの頭を手当たり次第に叩き潰した、グシャッてなって溢れ出してきたのは、そらみろ…



自由詩 清潔な皮に切れ目を入れて引き剥がしたらそいつは立派な肥溜だったよ Copyright ホロウ・シカエルボク 2019-01-10 22:34:44縦
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