夢のてのひら
立見春香


てのひらで
強くは握れないほどの
熱さになってる
夜の自販機の缶コーヒー

けれど
冷めるのは早くって
宇宙の熱量法則からみても
あまりに早すぎる

なぜなんだろうか
夢だからか


なにに対しても
わかる
としか言えないでいると
自分の心が
宇宙に霧散したりしませんか


見上げると
大好きな青空に白雲
綿菓子のように甘そうだから
食べたいと思ったけど
水面に照り返すまばゆい光の波が
ふとリアルを
その淋しい人の影を
浮かび上がらせてくれるから
もういいや


見上げると
大好きな青空にハート型の気球が昇っていく
その空気のような軽さに心を乗っけて
夢から覚めようと思う

いまもなお
一本の缶コーヒーを飲むよりも
その温かさを握りしめて
その急激な冷え方の早さに
まるでしあわせを奪われたような
失望を感じたりしている


そんなわけないでしょう


もういいや
これは夢なんだから
夢から覚めようと思う





自由詩 夢のてのひら Copyright 立見春香 2019-01-10 04:16:45
notebook Home 戻る  過去 未来