ひかり到く手
木立 悟








埃まみれの
赤と黒の上に降り
焼け途切れゆく痛みだけが
春の汚らしさをすり抜ける


夜の空の水時計を
径の光が照らしている
窓に溢れ やがて散る
一夜のまばゆさ


燃える 燃える
壁の絵と共に
壁は燃える
空の半分も一緒に


廃墟の虹
午後に傾ぐ影
指は霞む
触れる真際に


真昼の曇に
倒れゆく老人
玩具の墓地
黄金と緑の花


夕暮れと夕暮れがこすれ合い
冬のなかに冬を作る
径は凍り 径を掲げ
層は重なり 水音となり


誤った婚約者に
注がれた杯の油
吹雪の合い間
七連めの青空


時に捧げる花
空へ空へ昇る樹々
ひとりの声とむらさきが
冬を冬へ近づけてゆく




















自由詩 ひかり到く手 Copyright 木立 悟 2019-01-09 20:11:05縦
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