十四年ぶりの熊本城
朝焼彩茜色


3日に初詣に行った
熊本城の側の加藤神社

空が百本の百群の矢を放ったような
そして 優しい太陽の光をくぐってつつ抜ける
止まらない刹那が続いていくような
懐かしい空だった


まだ彼氏と彼女だった頃と同じ空だったかもしれない
きっと空なんて仰いでなかった
色々あったことが色とりどりに清んできたこと
思い出の引き出しがフワッと ひらいた

あの頃から大事にされていたこと
あの頃は気がつかなかったけれど
今では 頬をさわる私の中の第六感が
心地よくおしえてくれる

あの頃から大事にしてくれてきたから
私の頬は ずっと桜がたくさん染まっている


懐かしさに耽っていると 石の蹴る音がして
思い出の引き出しがパタンと閉じた

前を歩いている夫が次男を たかいたかいってしている
きゃっきゃ きゃっきゃ 幸せな声がする
私の手を振りほどいて長男が走り出す
「ぼくもー」


お城のこの場所はとても心地の良い風の生まれる
泉のようだった 冬の草木は大地の源で翡翠の命が
その季節を待っているのが 透けて見えた

地震の爪跡も忘れてー


夜になると月明かりと貴方の色で空が
むらさき色のグラデーションを組み
貴方の黒が映えていた

痛々しい その姿
ああ 吐涙
地面に並べられた 武者返しの大きな
そして小さな 誇り石たち
ああ


それでも前へ押してゆかなければならない時間
無念から大きな期待へと気持ちを整える
息子たちがあなたそっくりな声に変わって大人になる頃
お城 完成予定らしいが

楽しみだ

お城の軸 オーラからひ弱な声が何一つ聴こえなかった
余裕綽々な風に頬さらわれてお城
だから
楽しみだ
生まれかわるように

あれは魂 そうなんだね
私と同じように 大事に守られてきたんだね

同じ魂






同じ魂











自由詩 十四年ぶりの熊本城 Copyright 朝焼彩茜色 2019-01-06 02:35:12
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