Fuoco Intrappolato/閉じ込められた火との約束
AB(なかほど)

  

ファイヤーバードが心のどっかにとまって
翼を丸めてうずくまってしまう
僕たちはそれぞれの命を生きているのか

解き放てファイヤーバード
心の中のファイヤーバード

やがて僕らも消えゆくもの
ならば

**********

それはずっと先かもしれないし
もうすぐかもしれない
何時灯したのか記憶もないけど
もうすっかり、といいかけてやめた
まだひざをかかえたまま
あの日と明日が見えそうで見えない僕らは
窓の外の景色が
もういいよ
もういいよというまで待ち続ける
火は消すのではなくて

まだなんか
あんたのこころん中でくすぶっとる真実が
うそにならんように、うそにならんようにて
わしはただただ願うしかないんかいの
あんたのゆわはる正義てなんの事や
それで誰の魂が救われるゆうんか
自分の魂も冷めてまうんやないか
ほんでもあんたにもわしにも
まだ消されへんぬくもりがあるんやないか
消したらあかんもんが
その胸によく問うてみ
わしもよくよく考えてみるわ

消さないで
消さないで
空を見上げて自分の中の ファイヤーバードが
やがて翼をひろげるその時まで
それはずっと先かもしれないし
もうすぐかもしれない

**********

きのう
かわした約束を忘れた君のほうが
よっぽどまともなこころを持っている

ずっと
気づかないふりをしている
僕のほうがうそつきだ

晴れているかい
君のこころは

雲の隙間からチンダルの梯子
その光に名前をつけたら
翼をひろげるように

きのうかわした約束は
僕も忘れた
そんなことより大事なことを
守るために

**********

ファイヤーバードが心のどっかにとまって
翼を丸めてうずくまってしまう

テレビでもネットでも
世界のニュースが流れて
その側でキーボードをいじるたくさんの僕らが
架空の世界の話題で
立派にも傷ついたり笑ったり
その何気ない時間に
間違いなく命を削り続けているというのに
夢か現かもさだかではない世界は
とても居心地が良くて
ただ何も知らないことが
幸せだと思えてしまうのだけれど

傷つけずにすむのなら
戦わずにすむのなら
と目を閉じているうちに
大切なものが消えてゆく
大切なものが
消えていった
それが何かさえも忘れて
今朝のコーヒーのいれかた失敗したな
と思ったつかの間とか
あの娘の胸元きれいだな
と横目で見たつかの間にも
どこかで誰かが泣いたりしていることも
忘れてゆく
僕たちは
忘れてゆく
僕たちは
それぞれの命を生きているのか

消えそうな声に
消えそうな笑顔に
消えそうな全てのもに
耳を澄ませファイヤーバード
眼を開けファイヤーバード
心を開けファイヤーバード
その足で蹴りだせファイヤーバード
血潮が流れている
自分自身からも目を反らさずに
解き放てファイヤーバード
心の中のファイヤーバード

やがて僕らも消えゆくもの
ならば




   


自由詩 Fuoco Intrappolato/閉じ込められた火との約束 Copyright AB(なかほど) 2019-01-02 20:14:29
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