ふうせん
アンテ



まゆこちゃんは
ぶらんこをゆらして
ときどき
がむをふくらませて
あしをゆらして
そらをみていた
ふうせんは
かぜにながされて
すぐにみえなくなった
そんなにたいせつなら
どうしてはなしてしまったの
こえがきこえた
きがしたけれど
だれもいない
だれもいない

しらなかった
どんなものにも
しくみ
があるんだね
しらなかった
えいえん
につづくものなんて
ないんだね

なーんにも
かんじなくなりたいなあ
まゆこちゃんが
いきおいよく
じめんにちゃくちする
ぶらんこがひとりでゆれている
すなばのよこ
くつがころがっている
よごれちゃうよ
いぬがもっていっちゃうよ
まゆこちゃんは
わらって
ひこうきぐもをゆびでなぞった

ひみつ
って
ないしょとはちがうんだね
いわないだけじゃ
ひみつ
にはならない
かなしいこと
つらいことは
いわなければいいんだ
っておもっていた
それはひみつじゃなかった
ただの
ないしょのこと
ただそれだけ

なぜ
とんでいってしまったの
どうして
はなしてしまったの
まゆこちゃんが
てを
にぎりしめたてを
みつめる

われたこっぷは
かたづけて
もえないごみといっしょに
なかったことにする
いっしょのこと
とおい しらないまちで
べつのなにか
にうまれかわっても
きづかない

きづかない

ふうせんが
とんでいったのは
てをはなしたせい
じゃなかった
ふうせんのいとなんて
さいしょから
なかった
わたしは

つよいかぜがふいて
まゆこちゃんが
とおざかる
こえがとおざかる
てをのばしてももう
とどかない
さようなら
そらがあおい

さようなら
そらがとおい



自由詩 ふうせん Copyright アンテ 2019-01-02 11:17:18
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