メープルコート


 季節はたそがれ、満ちてゆく。
 幸福と不幸の狭間に立って漏らすため息。
 願い事を信じる力はあるか。
 心は風に舞い、静かに溶けてゆく。

 古時計のぜんまいを巻いてみるが、過去に戻る事はない。
 記憶の彼方でローズは歌う。
 待てば暮れ、月夜の晩にペンを持つ。
 白紙に水を垂らせば浮かぶ顔、顔、顔。

 心は生きているか。
 深い眠りから私を起こすのは誰?
 北へ向かう夜汽車の中で貴方の面影を探す。

 冬枯れの景色を切り取り記憶する。
 寒空に浮かぶ月明かりの下、
 ノートに書き記す母の横顔。


自由詩Copyright メープルコート 2018-12-29 06:23:51
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