夢はけして薔薇色じゃないさ
こたきひろし

まだ娘二人が幼かった頃に
貸借の棲みかを出て建て売り一戸建てに引っ越した
借金して手に入れた家は
この俺の人生を地獄のローンレンジャーにしてくれた

サイコー
な訳がない
だからと言って
サイテーと言うわけでもない

夢はけして薔薇色じゃないって事に
よくよく気づいただけさ
貸借の時にあった生活の余裕が
いっぺんに吹き飛んでしまったんだ

新築の家は
いい匂いがしたけれど
そこから始まる俺の未来には
悪臭の気配が漂っていた

三人目を作るなんてもうあり得ない
そうならないように
夫婦は予防した


引っ越して何日目かに
近所の若い奥さんに声をかけられた
見覚えのある顔だった
以前はよく行っていた薬局の店員さんだった
あれっ誰かと思えばよく店に買いに来てくれたお客さんね。
と言った後に
「最近は他で買ってるのかなコンドーム」
と周りにはばかる様子なく聞かれたのには
返す言葉がなかった


自由詩 夢はけして薔薇色じゃないさ Copyright こたきひろし 2018-12-26 23:41:25
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