那由多
中原 那由多

遥か彼方、青い幻
煌めけば
欠伸の最果てからそれは聞こえる

カタン、コトン、カタン、コトン

喧騒は刹那
追懐は日記をつけるかのように
瞑想は鋏
夜のしじまのキリトリ線をめがけて

二、四、零、零、零
二、四、零、零、零
二、四、零、零、零
二、四、零、零、零

パラダイムシフトの襲来


微熱の枕元
赤い風船が膨らんだ
嬉しくなって飛び跳ねた
壊れるほどに抱き締めようと、その前に
罰、とばかりに破裂した
その衝撃は青春であるかのように容赦なく
さよならさえも届かぬほどに
遠くへと、遠くへと突き飛ばす

保健室で見とれた背中
それが蜃気楼であったことを
どうか笑ってくれないか


いつか触った面影を残したままに
ドレスコードの前習え

星屑のパレードは絶え間無く続き
夜と朝の境目を奪い去る
置き去りにした瓶詰めの恍惚も
仮初めを並べた中吊りの広告も
イカサマまみれの真っ逆さまに
疾風怒濤に呑まれてしまう

醜いアヒルの子は、今
モラトリアムを越えてゆく


九十八歩目、歓楽街

掬い上げた湯船の月のように
指先をゆっくり伝う毒、独、読

纏わりつく陶酔、怪物の手招き
強烈に焼きつき、偶像の色の変え
業、豪、合を背中に刻み込む

血走った眼に映える憧憬は
眩暈がするほどに天、転、展

淡、短、単と太鼓が鳴ったら

深紅の弾丸にその身を捧げる


柔肌を掻き毟るように選んだ言葉を
穴の中へと放り込む
底の見えない深い穴
不毛にも感じられるあのひと時が
自嘲の濁流をせき止めていた

これは忘れ去られたトランキライザー

穴はもう見当たらない
放り込む場所がないのなら
雲の切れ間をかき混ぜるほどに
積み上げて、積み上げて

那由多の輝、夢見て謳え


自由詩 那由多 Copyright 中原 那由多 2018-12-26 14:51:47
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