まぼろしのように
帆場蔵人

"まぼろしのように"
粘性の夢はつやつやとして
汗の匂いがする、果実の匂いがする
いつか異国から届いた葉書の匂い
紙の海を泳ぐとき紙の月が空にある
異邦の歌声は艶やかに過ぎて
あなたを思いだす、粘性の夢を泳ぐ
それは黒髪の海、白い月は面影
寝返れば願うほどにからみつく

窓を開け放つ、湿った風が汗と混じり
冷たく不快な十二月の空に

冬の虹、つやつやと冬の虹
紙ヒコーキが横切っていく

"まぼろしのように"


自由詩 まぼろしのように Copyright 帆場蔵人 2018-12-25 00:07:09縦
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