ト なって8 コトバ、ことば、言葉よ(改訂)
ひだかたけし


燃え上がる
刃、突き立て
燃え上がる
沈黙の極みのこの夜に
刃、突き立て
燃え上がる


コトバ、ことば、言葉よ
おまえの響き
俺の脳髄を串刺しにし
後頭部から抜けていけ
(なにかナニモノかを刻印し)
コトバ、ことば、言葉よ
やっとウットリとなったから
おまえの響きに耳傾ける
おまえの響きを叩き割る
フローリングに寝転んで
フローリングを何度も叩き
ルーズなビートを鳴らしては
喉を震わせおまえを呼び 

昨夜の夢は不意討ちだった
煮え湯を頭から浴びていた
痙攣しながら浴びていた
気付けば俺は野良犬になり
真っ赤に燃えて走っていた
街越え海越え夜底越え
宇宙の果てを走っていた
コーラコーラと木霊して
(底無き重ね写しのコーラ!)*
木霊の底まで響きの渦
響き渦巻く結界を
只ひたすらに走っていた

 名指され得ないモノ
 コトバの響きの渦に
 忽然と姿現し照り輝き
 また忽然と消えていく
 在ることのおぼろな輪郭を
 木霊させては逃れ去り

響き木霊のなかでのみ
己の在処を示すモノよ!


燃え盛る
刃、突き立ち
燃え盛る
沈黙の極みのこの夜に
刃、突き立ち
燃え盛る








*ジャック・デリダ『コーラ・プラトンの場』


自由詩 ト なって8 コトバ、ことば、言葉よ(改訂) Copyright ひだかたけし 2018-12-18 12:34:28
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