時間
中原 那由多

‪真昼の月の下を揺蕩う時‬
水平線に愛は溺れていく
電子回路による観測情報は
役に立たない事後報告

追いかけているのか、追われているのか

いずれにせよ
その柔肌に触れた、あの感触を
思い出せないままでいる

忘れた頃にそっと浮上する
息継ぎのタイミングは、ずれてばかり
掬い上げた指の隙間
さらり、落ちて、残らない
繰り返しては繰り返して
刻一刻と満ちてゆく

「幸せ」の影に隠した長い針
指先で滑らかな感触を確かめながら
中心(こころ)を貫き、繋ごうか
改札口を抜けたかのように
真夏の少年のように
ただ真っ直ぐに夢を刻む

朝焼けが眩しいのは
深い夜があったから
たじろいで、ぐっと瞼を閉じたなら
白いペンキで塗り潰された窓ガラスが割れ
二つの線はようやく重なった

讃美歌は今、鳴り止まない


自由詩 時間 Copyright 中原 那由多 2018-12-14 20:10:31縦
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