君の命が杯になる
由木名緒美
ひとつぶの光を追う
求められた大きな聖杯が
冷えた水蒸気をまとう
あらゆる渇きに喉が浸せるように
切り裂かれた流星は象徴を保ったまま幾片の塵となり降り注ぐこの夕闇に
君は息をひそめて自身の影の色彩を問う/儘ならない不安定な呼吸を庇うように
光は
断片を放射状に浮き上がらせる
命の群れに合図をおくりながら
ここは前線/命と命の応答が/一期一会の均衡で/互いが互いを認証する/風雷の速度
邂逅の熱線だ/賭けた魂が射られる衝撃/余波はせせらぎに吸い込まれながら
迎撃に己の拳さえ切り落として迎え討ち
叫び声にあくなき祈念を反響させて
最前線では人類すべてがみな戦士/血塗れの折衷人に街灯は点滅で勲章を祝し
果てしない幼子の喚き声に力なく微笑みかける母/そのほつれた髪を飾る黄金の留め具
そしてそこに君はいる
その戦隊の只中に背中から飛び込んで
その導かれる使命も知らずに
その命の痛みも知らずに
私は路地裏で目撃しよう
前線からはぐれた残存兵の目で
溝に潜んで世界の泥土を暴こう
愛はいつも最前線で
君の命が杯になる
その器がかがやく朝陽を受け止める
大いなる聖杯となる武運を祝そう