ガラスの心
犬絵



その人の
あとを追って
こんな風に
なってしまった


砕けないよ

砕けるほど
かたくないもの


流れないよ

流れるほど
弱くない、はず


砕けたのは
ガラスから
温もりを
奪い去り
そのままで
暮らせない
温もりを
奪い去り


砕けたのは
あの花の
名前さえ
知らないで
ただ
愛でて
ただ
いとしくて
ただ
好きで
ただ凍りつき


そして
砕けた


砕けたのは
ガラス
砕けたのは

砕けたのは

砕けたのは



心は
砕けない


心には
砕けたガラスの
みちばかり




砕けないよ

砕けるほど
かたくないもの


流れないよ

流れるほど
弱くない、はず




一番が
たいせつで
一番の
席が欲しい
一番が
あるのなら
一番で
なければと
一番に
こだわって


でもそれで
そこにふしあわせが
一番ちかくに
忍び寄る
悪夢






歌を
うたって
欲しい
んでしょ?


悲しみのない
苦しみのない
悩みのない
偽りのない


そんな世界の
ありもしない世界の
でも、
そんな歌を
うたって欲しい
んでしょ?




切れても
のど
切り裂けても
うたって
欲しい
んでしょ?


死ぬまで
うたって
欲しい
んでしょ?




ああ、だから
鬼も泣く
一匹生きる悪鬼でも
ああ、その道が
砕けたガラス
ガラスの道ゆく
悪鬼
一匹


ガラスの荒野を
裸足で歩く
鬼がいく


風吹く荒野を
いく悪鬼
乾いた目をあけ
一歩づつ
ガラスの破片を
踏みしめて
一歩
また
一歩

荒野いく






その人の
あとを追って
こんな風に
なってしまった


砕けないよ

砕けるほど
かたくないもの


流れないよ

流れるほど
弱くない、うそ



自由詩 ガラスの心 Copyright 犬絵 2018-11-17 13:33:45
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