少女は、荒野をめざす(風塵《改》)
秋葉竹

天使だって、
死ぬんだ、って。

それは、
凍りついた川の岸辺に
天使の肉体がたどり着いていた。
なぜか、
人が、
人の心を、
疑い、
恐れる、
荒野の街の、
夕間暮れ。

それは、
もはやぬけがらとなった天使のことを
横目にみて、
1度だけ立ち止まったときのこと。

なぜか、
その天使をみていると
涙のような水が流れた。

首をかしげてみたが
その天使に見覚えはない。


あたしは駆け足で、
急な坂道を登りきる


君との約束の場所、
丘の上の公園に行き着く


待っても、待っても、来ない
君の、
吹く風にも似た
かすれた声だけが頭の中に聴こえる。
空から降るそれは、
あたしの聴きたくなかった
幻の声だろう。



そうなのか?

さっき見た、
流され、凍って、棄てられた、
天使のぬけがらが
君の、
ヤツにすべてを奪い尽くされたあとの
今の心の姿だったのか。

さぁ、
ほんとうのことなんて、
わからないさ。

ただ、ひとり、待っていても。


丘の上の公園の、
樹々の枝を揺らす冷たい風、
吹き止まず、
ただ茫々たる眼下の荒野の街へ
吹きおろす、

風、吹きおろす、

風、吹き止まず、

砂塵のなか、もはや挑む心もなく、
けれど、なぜか、
あたしはこの街を、すてない、
風塵のなか、目を伏せ、ひとりでも………


ひとりでも
ただ
君を待ち

立ち尽くす






自由詩 少女は、荒野をめざす(風塵《改》) Copyright 秋葉竹 2018-11-14 07:58:22
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