昔は良かった
卯月とわ子

古ぼけたオルゴール
今じゃどんな音楽を奏でていたのか
誰も知らない

時代に取り残されて
ホコリまみれになった君は
わたしによく似ている
今のわたしに

必死にしがみついていた
でも
その苦労虚しく
わたしは置いていかれた
あっけなく
何事もなかったかのように

時代という名の大きな列車には
大勢の人が乗っていたんだ
わたし一人落ちたって
誰も気付くはずはない

昔は良かった
誰かの口癖
煙たく嫌っていた言葉が
わたしの背に張り付いた
今口を開けば
わたしも誰かと同じになるだろう
昔は良かった
懐かしむ記憶なんて何一つないけれど
今よりも
昔は良かった


自由詩 昔は良かった Copyright 卯月とわ子 2018-11-14 04:44:47
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