立つ
犬絵

この身うつ
この心うつ
雨は降れ


雨は降れ
だんだら模様の
灰色の
雨は
降れ降れ
その矢で
刺された


刺された
命が
血を流す
どろろ
どろろと
血を流す


雨は止み
そっと止み
刺された痛みを
冷めて見て
凍りつくほど
醜くて
喉の奥から
愛を吐く




山はるか


はるか彼方に
音もなく
夕焼け空に
飛行機が、
遠くへ飛び去る
雲と成る
こどものときみた
おんなじひととき


どこに立つ
死に
立ち
死に
立ち
死に
切るあした
断ち切る命の
かそけきさだめ
力で毀す
やわらかな夢


その力、
逆らえず、
無様にも、
嘲笑され、
でも、
立っていた
立っていた
それでも、
立っているしか
なかったんだ


いまとなっては
そのこころねの
清らかささえ
懐かしい


声がする
喜びの
歌声が
ひとかけらの星を
つつみこみ、
告げるには
少し
小さめの、
かすれた声が
喜びの、
ふりをした、
声でしゃにむに
歌うのを
うつむきながら
聴いている


雨は止み
街の
ひかりは
夜空へ
昇り
星の
ひかりに
成ると
いう


ひかれ
ひかれ
聖なる
十字架
その白き影に
逆らって嘘つく
冷たい
体の
冷たい

つらぬく
風が
吹き抜ける


そんな
希望
うすい
現実
うすい

それでも
顔を上げて
立たねば
ならない
ただ、
どこに
立つか
まだ、
決めかね
ている


なにも
欲しくない
のは
なにも
みえないから
そういう
わけ
ただ
それだけ







自由詩 立つ Copyright 犬絵 2018-11-03 06:05:00
notebook Home 戻る  過去 未来