輪廻に溺れる
新染因循



溺れないようにもがく
ここにあるものは肉体と
満たされない空と
注ぎ足されつづける水

酸欠の頭で考えることは
誰が注いでるとか、
どこまで行くのかとか、
そんなことではなくて

隣でまた誰かが溺れて
おぞましいほどの無明が
足を冷たく鈍らせる
水はどこまでもわたしを蝕む

さようなら、水飛沫も
色のない空も
冷たさも
もう

水面がわすれたひとたち
わすれたこともわすれられた
あまたの肉体たち、
名を失ったわたしたち、

水面はますます上がって
わたしは沈んでゆく
引きつけられるのではなく
拒まれて、

水になりたかった
ただ水になりたかった
わずらわしかった
さみしかった

わたしはもがいた
酸欠の頭でもがいた
なぜまたもがいて、
また誰かが溺れるのか

そう象られていたから、
わたしはまたわたしになった
もがいてもがいても、
もがきたりないわたしになる



自由詩 輪廻に溺れる Copyright 新染因循 2018-10-29 01:18:24
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