過去からの旅人
st

ささやくように

話しかけてくる

冬の足音


秋の終楽章の

フィナーレは

もう間近


木枯らしのような

冷たい風が

吹き抜け


舞い落ちた枯葉たちが

公園で戯れるころ


過去からの旅人が

やってくる


それは

ぼくのこころに住みついた


セピア色の彼方の

もう一人の自分


アルバムという

馬車にのり


時が止まったままの

写真を持って


色あせた 

約束の言葉を胸に


この公園を目指す



ぼくは

忘れてはいないけど


きみは

忘れたのだろうか



一日一日と 過去は積み重なり


一日一日と きみは遠ざかった



もう何年になるだろう

約束したはずの

この公園に来てしまう


あのとき

ぼくのこころのなかは

きみだけだった


あれから

ぼくは多くの恋をして

今は幸せのはずなのに


なぜだろう

ふたりの未来を夢みていた

若いころを想い


こうしてきみの面影に

口づけるのは


今年もまた


来るはずのない きみを待ち


待ちぼうけの 日が暮れる






自由詩 過去からの旅人 Copyright st 2018-10-23 04:49:21
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