すべてが
Seia

重たいドアを開けると
花瓶がひとつ
テーブルの上に置かれていて

「ここですべてがわかります」
一言だけの手紙に添えられていた
最寄り駅からの地図と鍵

逆光に照らされた
椅子に腰掛けているひと
わたしをじっとみつめている

暗号の解読を終えて
集めたキイワードを並べ替えると
ひとつの文章になっていた

「ここですべてがおこります」
解答欄に打ち込んでみれば
表示された一枚の地図

謎解きはまだ続いていたのだ
軽い気持ちで始めたことを
すこしだけ後悔していた

何気なく手にとった
広告が貼られているはずの
ポケットティッシュには

「ここにすべてがあらわれます」
とだけ記載されていて
何かのキャンペーンなのか

一緒にもらった白い紙には
薄い青で書かれた住所
わりとここから近い気がする

鍵は開いていた
誰もいないワンルーム
正方形の部屋に花瓶がひとつ

窓際の椅子にこしかけてみる
生活感のない空間に
似合わないテーブルクロス

扉がキイと鳴って
見覚えのない顔が覗いている
同じものをもらったひとだろうか

会釈でもすればいいのか
何秒経ったかわからないまま
向かいの椅子を平手で指し示した

「すべて」とは何であるかを
問われているような時間が流れて
ドアノブが回る擦れた音をふたりで聞いていた


自由詩 すべてが Copyright Seia 2018-10-22 18:52:37
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