聴診器
ミナト 螢

制服のふたりがイヤフォンを分けて
同じ音楽の風に乗ったまま

片耳を横切るかすれた予鈴
真ん中でぶつかる裏声の歌

美しいものに触れるとみんな
お腹がいっぱいになりませんか

鞄の中のアップルパイを
食べていないから本当なのだろう

スカートの裾が手を振るような
さよならをする前に確かめよう

君のイヤフォンを外しながら
胸に当てた心の音を探して

伝わって来るドキドキの鼓動が
僕の指先に信号を送る

食べ忘れたアップルパイを割る時に
破れる薄い皮の一枚が
僕たちの鼓膜みたいに震えた


自由詩 聴診器 Copyright ミナト 螢 2018-10-15 09:12:23
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