月と夜
st

ぼくが一番きれいにみえる

秋がきたよ

と月が夜に胸をはる


中秋の名月というけど

ぼくには迷惑だ
 

と夜が月に

言いがかりをつける


まあまあ
 

と雲が仲裁にはいってきて


夜さん 

なんで迷惑なの


と夜に問う


だって月が目立ちすぎて

ぼくがかすんでしまうじゃないか


と雲に答える


そうだねたしかに

夜は真っ暗でこそ

ぼくたちも美しい


と星たちまで割り込んでくる


それじゃあぼくが

雲を吹きつけて

月を隠してしまおう


と風も割り込む
 

わかったわかった


と月がみんなに


それじゃあ

ときどき風さんが雲さんでぼくを

隠すというのは どうかな


と妥協する


いつまでもつづく

月と夜と雲

そして風と星たちの会話を


公園のベンチで 眺めていた少年が

いつのまにか 

家路につき


しんしんとして 虫の音とともに


秋の夜は更けてゆく







自由詩 月と夜 Copyright st 2018-10-01 07:31:21
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