空席
ミナト 螢

木々のざわめきが身体を撫でるよ
肩に置かれた手の温かさを奪った

雨なのか風なのか時間なのか
そのどれもが正しいようで
傘を差さない私を責めた

ブラウスの襟が重たくなって
羽ばたけずに折れた翼の形

隣を一緒に歩ける人が
今はもう誰も残っていなくて

飛ぼうとしても無駄なエネルギーで
ロケットの操縦を邪魔するだけ

ショーウィンドウに映る
後ろ姿を支えてくれる
両手が見えないなら

冷たい湿布を貼ったみたいな
身体の空席にマフラーを巻く


自由詩 空席 Copyright ミナト 螢 2018-09-30 10:01:32
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