泣いてしまった
立見春香


帰ってしまった貴方の影が
月光射し込む路地にいる気がします

わたしを見ていてくれているのでしょうか

添えない怨みを貼り付けて
悲しい眼をしたわたしの顔を
じっと見ていてくれていますか

帰ってしまった
愛しい男神に祈りたい
破ってしまった約束は
今夜は許してあげるけれど
穢れてしまう未来をわたしに頂戴ね
それだけは約束を守ってくださいね

とても長いあいだ
自傷の傷を恥だと思っていたので
怖くて人を好きになれなかったのです

愛してくれると
言ってくれたね
わたしあの夜わかれたあとから
ほんとうにありがとうって
なんどもなんども自分の部屋で
ベッドに転がりながら
転がり回りながら
小さいけれど
ほんとうにありがとうって
声に出して
でも裏切られるのも怖くて
なんだかわけわからない感情の波が
ざぁー って わたしをさらって行って
なにがなんだかわからないまま
顔ぐちゃぐちゃにして
ほんとうにありがとう
ほんとうにありがとう
って 泣いていたのです
ほんとうに一晩中 泣いていたのです



自由詩 泣いてしまった Copyright 立見春香 2018-09-30 04:35:51
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