木屋町三条下がる
TAT
あの頃京都で小銭で呑もうと思ったら
木屋町三条下がるのアフリカだった
500円玉の現金を一々渡しながら
ソルティドッグとかモスコミュールとか
安いカクテルの由来を講釈垂らして
語りながら
セックスしたくてしたくて
必死でアムラーな婦女子を口説いたもんだ
けれどもいっつも空振りで
ようやく引っ掛けた中柄なマシュマロモンスター
(ピッと鋭い眉毛・への字口・深い瞳・豪放磊落系)と
契るかと思ったら結局別れたよ
ぶらぶらと人生の羅針盤が
赤ん坊をあやす天井の玩具の鳥が
いたずらに指し示す北を
俺の行き先と決めて
俺は往くんだ
平野を
原野を
闇夜を
昼を
星月夜を
今を
過去を
昔と
未来を
あれから二十五年も経ってアフリカは跡形もない
だが500円玉がまだ
ポケットに在るんだよ
自由詩
木屋町三条下がる
Copyright
TAT
2018-09-28 00:10:05