忌み嫌う蛇が
こたきひろし

田んぼと田んぼの間の細い道。その道端に夏草が生い茂っていた。
道の上に陽炎が立って揺れていた。

普通の人は誰もが忌み嫌う蛇がくさむらのなかに潜んでいた。
少女は夢のなかに現れた
少年は夢を見ていた

くさむらのなかの蛇は人間の少女に化身して少年の前に現れたのだ。
これは紛れもなく夢のなかだけど、覚めなければそれに気づかない。

遊ばない?
初対面の少女が言ってきた「私と一緒に遊ばない」
「何して遊ぶの?なぜ遊ぶの」
少年は聞き返した。「僕は君を知らないんだよ。名前もどこからやって来たのかも」
すると少女は答えた「私はあなたの名前もどこにすんでるかも何もかも知ってるから大丈夫だから遊びましょう」
それは本当に怖いなと少年は思ったが、少女はやたら可愛くてその体は女になりかけていたから警戒心はいとも簡単に緩んでしまった。
それで何して遊びたいのと少年は聞いた。
あなたが好きな遊びよと少女は答えた。
忘れたのかな
私は横になって眠ってしまうから、その間に私の体を触る遊びよ。
思い出したかな。
ずっと前、まだ小さかった時に何人かの男の子と一緒になって眠ってしまった女の子の大切な場所を代わる代わる触ったでしょ。
少女の言葉に少年は吃驚した。そして反論した。
あれはあの子が悪いんだ。あの子は眠ったふりをして罠を仕掛けてきたんだから。スカートが捲れるようにしてたんだよ。
そして一番に悪いのは僕じゃない。最初に触った奴だ。
それに続いて皆が順番に触りだしたから、つい僕も。その場の空気に飲まれてしまっただけなんだから。
それに女の子の目がうっとりしてたから許されるんだろうと思ったんだ。

はっと目が覚めた時に少年は中年の男に成り代わっていた。
現実はいつも泥々としていた。

性という鱗を身に付けた蛇がいつもそこにいて、誰でも一度は経験したに違いない
医者さんごっこをそれに近い遊びを
僕は忌まわしい記憶の中からいまだに拭き取れずにいた。


自由詩 忌み嫌う蛇が Copyright こたきひろし 2018-09-26 08:35:44
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