ホーム
言狐


ぴこん、ぴこん。

人もまばらな仄暗い駅のホーム。
まるで、テレビゲームでハイスコアをとった時のような、軽快な音。
電車がホームに来ることを告げるものだった。
何もかもがばかばかしくなるようなそれに、黄色い線を踏みしめてしまう。
あと一歩踏み出せばきっと、ぼくは解き放たれる。そう、自分に云いきかせる。

ぴこん、ぴこん。
もう一回、鳴った。

もう一歩踏み出そうとした時、向かいのホームの壁の隙間から、外の景色が見えた。
あか、きいろ、あか、きいろ。そして、しろ。
それがとても綺麗で立ち止まる。
見計らった様に電車が遮る。

「また、死ねなかったんだ」

そう、嘲笑う。
汚いものばかりなのに、どうしてこんなに世界は綺麗なんだろう。

なんともない、という風にぼくは電車に乗り込む。
そんな自分が可笑しくて電車の隅、誰にも気づかれないよう小さく笑った。


自由詩 ホーム Copyright 言狐 2018-09-25 23:45:52
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