マスカット
st

巨峰よりも

マスカットが好きだ


好きで好きでたまらない

一年に一度だけの 

食べる恋人



なんといっても ぶどう狩りで

ぶどう園へ行き

熟したてのマスカットを味わうことだ


果物屋やスーパーにならんでいるものでは

ほんとうの味はわからない


天と地ほどの違いがある


一度食べたら

もうおかしなマスカットはいらない




家から15kmくらいのところに

秋になるとよく行く ぶどう園がある


サイクリングをかねての

ぶどう狩りだ


ぶどう園のおばさんと すっかり友達になり

量り売りのぶどうを まけてくれたりする


ちょうど五十肩で悩んでいたとき

相談にのってくれた事がある

その話とは---------


ぶどう園の仕事は過酷で

ぶどうの手入れで

切り取ったり もぎ取るときは

いつも 両腕を高く上げるので


ぶどう園で働くひとは 必ずといってよいほど

五十肩になってしまう


そんな時は

近くの整体師のところへ行く


サウナで十分に肩をあたため

肩を強く引っ張る


一瞬のことらしいが

激痛がはしるということだ


これで治ってしまうというが

おそろしい感じがして

結局その整体師のところへは

行かなかった



ぶどう園へ行けば

こんなふうに苦労して


大切に手入れされ

やさしい親なる木に

熟すまで育てられたマスカットたちが


黄金の一粒一粒をかがやかせ

秋の木漏れ日のなか
 

涼風に吹かれて 美しくゆれながら


いつも私を 待っている





自由詩 マスカット Copyright st 2018-09-25 03:21:56
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