闇に在って
木立 悟







わずかに開いた
夜の扉
ふくらはぎを
受信する耳


ふるえ ふるえ
どこか冷たい
縦も横も
どこか離れて


どの扉にも
開けたあとがあり
その幾つかはひとりでに動いて
羽の生えた背中が見える


寄る辺無きものが
土を知らぬ草が
けだものの脚を洗い
冷たく在りつづけている


ひとりめのけだものが吼えると
ふたりめから後はいなくなり
けだものはひとり
焦土にひとり


密生した枝葉のなかの
枯れた数枚が風に揺れ
鳥に震え 鳴きながら
午後に影を曳いてゆく


蜘蛛の巣に覆われた窓の隙間から
血と星にまみれた空が見える
滴も飛沫も
街に忘れられた径を染めてゆく


闇に在って 闇に無く
わずかな波の傾きを馳せ
どこまでも陽に取り残され
けだものは行方に放たれた火を歩む


雪に挿された針と花
岩のはざまを埋める曇
光はどこまでも光に降りて
けだものの背の火に呑み込まれてゆく






























自由詩 闇に在って Copyright 木立 悟 2018-09-24 20:24:06
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