ちいさいひとり
「ま」の字

夕べのそらの木の下で
かぜふくしげみにひざをかかえた
おれの顔のちいさい一人がすわっている
きまじめな面つきの
むかしのテレビドラマのような
ひどく地味なふうていで
(なあに 貧しいだけさ )

ふとしたひょうしにちいさいおれは
こどものころのかおになる
おや と見なおすとおとなのおれだ
おとながちいさいだけなのか
やっぱりこどもなのか
よくわからなくなってかぜも寒いのだが
そこに
おれの顔の一人はすわったままだ

くさむらのなかに居るおれは
かおなど 灰ぎみにあおざめ
着てるものといえば
シャツいちまいのぺえらぺらだ
どうした
なにか深いわけでもあるのか?
そんなところで餓えないか?

こずえのうえのそらがしずかにいろづいてゆく

なんねんか
ちいさい一人をさがして
しげみというしげみをほっつきあるいたなあ
そのころはもう一人のおれを しんじていたんだ
なあに
いまじゃ信じちゃいない
だいたい人生みえてしまったし
とりあえずだがやることはありすぎる
(果たせそうもないやくそくもなあ) 
だがな あのちいさいおれは
なすべきことも
はたせそうもなくなったやくそくも まだしらないはずだ
確かもっと
とおいまえの おれなのだ
(いったい 何由来なんだ?)

おれはどうやら しっている
あれは ただそのままどうしても
木のしたにすわっているちいさい一人
もってうまれてかかえたままの
ちいさい一人なのだ
おい
生まれた意味など詮索するな
意味はもう持っている どうしようもないんだよ
ほほうそれで
もってうまれて かかえて
ずうっとすわっているとは
なんだ嫌がらせじゃねえか
いやいや 興ざめたおっさんがおに いまさら興ざめるなよ
すこし身のあつさこそうすくなったが
あれは
まばらに揺れるくさのあいだに
なんだかわからないけれど頑としてすわっている
おれと 釣りあいでもとっているというか
ちらちら
かおなど はいいろにぼやけてきても


自由詩 ちいさいひとり Copyright 「ま」の字 2018-09-23 23:42:28縦
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