透明の地
ヒヤシンス


 北欧の地の寒空にカモメが何羽も飛んで行く。
 機嫌を損ねた海原に彼女の顔を重ね見る。
 愛は飛んで行った。
 この悲しみはなんだ。

 共に過ごした年月に期限などないと思っていた。
 ただ一人安らぎを求めやってきた。
 針葉樹を抜けると胸を打つのはフィヨルドだ。
 ブルーの世界は殊の外悲しい。

 君のことをあきらめたくない。
 君は僕の大地。
 とめどない涙は君の胸元を静かに流れる。

 北欧の厳しい寒さに君の優しさを重ねる。
 僕の氷河が静かに溶けてゆく様をごらん。
 そう、それはたった昨日の出来事なんだ。 


自由詩 透明の地 Copyright ヒヤシンス 2018-09-23 05:13:39
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