にんげんよ
秋葉竹


雲の声を聴こう
生誕40分の
白さしか知らない真っ平らな愛情のような
幼なさをかたちにした

雲の声が聴こえる
はずもないのに
いつのまにか助けてくださいと言いたかった
約束の時間は黄昏の塵芥にまみれて
暗闇の心を募らせていく

自分が一番なおざりにできるから
悪なんて聴きたくもない人間の世界に
結びつけようとする糸の色は
素敵な愛情の深さを強さにしている
亡霊の哀しみに少し似ているし

どこでも時代を滅ぼそうとした
破壊の跡にだけは
絶対に同じ種を蒔いた
あの愛情の裏返しのような暗さに似ている


ほろぶことだけが
哀しみを癒してくれるし
ほろぶことだけが
空しさを紛らわせてくれる


黄昏のメロディーが大きな流れに失われて
次の瞬間
まるで絶望を墨にして書いた文字が
心に咲いた花を黒く塗りつぶす


地平線の向こうに見える
人間に似せた花と文字の大きさを見間違う

まごころは、そこにあらず、
透明な悲しい現実は
そっとその頰に
傷跡を残し
流す血を
舐め


はなうた歌う自由だけ
許されない希望と
ちゃらんぽらんな絶望の
影のような亡霊を横目にみて
失われた時のはざまにもしや
目さえ閉じていれば
あらわれていただけることを
信じなければならない
夢を見るというのなら

どこも同じ自由な絶望を受け入れ
杓子定規な愛情を注いでくれる
むかし愛した時代の愛人たちの姿を見せても
なにも動かないというのなら
にんげんよ

その罪には
なにを言ってあげればよいのか
わからないまま
夜にまぎれてしまった
思い出すと微笑ましい
ちっちゃな真実が
ちっちゃく灯っているだろう
にんげんよ

それはご存知なのだろうか?





自由詩 にんげんよ Copyright 秋葉竹 2018-09-21 22:35:39
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