のぎへん H30
AB(なかほど)

おびとけでらのかえりみち
やまのべぼんちさつきばれ
すいでんわかほわたるかぜ
あぜのはなつみかえりみち


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1.のぎへん

先週末、新幹線の車窓から
もうほとんど終わってしまったんやないかて思てた
金色の風景が流れてた

一関のねじりはさがけはモリゾーみたいやのに
山越えた千厩ではよく知ってる横一線になる
そのはさがけはまだ少なく
トンボとちょうがまだ盛んに飛んどる


トンボが秋津て呼ばれたり
銅鐸にかかれたり
そもそも秋津国て呼ばれてたんやなんて話
誰に聞かせるわけもなく口にしとる

あぁ、これでは祖父と同じやないか

室根山のふもとも
まだ黄金じゅうたんひろがっとうけど
先の台風のせいで田んぼの水抜けんし
コンバインを入れられん

とのんびり答えてはる


なんや、
まだまだ僕らも
のぎへんのくにの住民やないか




2.軒下いっぱい

十五年ぶりに山辺の路を歩く
あのときは誰と歩いたっけ

いくつもの寺や神社で
いくかのお願いをしながら
あのときは誰と

箸墓の謂れ読んでるころから
みぞおちあたりくるもんは
山辺の夕焼け
    卑怯なくらいに

あいにく
今日の大和の風は砂をはらんでることもなく
腰かけた店先では
下をうつむくしか
なく

わかったって
本当はもうとっくに思い出してる

差し出された干し柿は
とても甘く




3.迅奈良と幣

生駒さんの餅まきで
みっちゃん手え伸ばしとったけど
その手に餅は届かんと
白い紙切れだけが絡んできよった


帰り道

こんなんいやや
てちぎろうとしたころ
竜田川の迅奈良が顔出して

そのひらひらで
おっちゃんさすってくれんかなあ

 っていうてきた


なんで

 って聞いてみたら

たまにな
誰かにひらひらで背中のほうさすってもらわれへんと
棘の毒が弱なってまうねん
おっちゃん毒ないってなったら
かっこつかんねん
な、嬢ちゃん


力いっぱい
迅奈良の背中さすったみっちゃんは
そのお礼に

とっておきにするんや

 って言われて棘一本もろた


そのみっちゃんもな
今年はとびきり別嬪な巫女さんや
せやけど
とっておきを自分に刺してもうたんやで
あないなかみ憑かりにヒラヒラ振ってからに


餅はまだかいな



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帯解寺の帰り道
山野辺盆地五月晴
水田若穂渡る風
畔の花摘み帰り道

生まれくるもの帰り道

生まれゆくもの帰り道




      


自由詩 のぎへん H30 Copyright AB(なかほど) 2018-09-20 13:24:33
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