小さな村で見た
石村




いつぽんの川がながれてゐる。

川べりの道は夏枯れた草に覆はれてゐる。

川はゆつたりと蛇行して その先はうつすらと 野のはてにきえ

太古の記憶へとつづいてゐる と村びとたちは云ふ。


川の右岸を 白い服 紺の帽子のこどもたちがあるいてゆく。

男の子も 女の子も 一列であるいてゆく。

今日はいつまでも夕方にならない。

こどもらの列は ながながとつづいてゐる。

みな顔がわらつてゐる。

何がたのしいのか 面白いのか わらひながらあるいてゆく。


川が見えなくなる先の そのまた先に

入道雲がむらむらとつき出してゐる。

ひとりのこどもが その雲に紺の帽子を投げた。

それを合図にするやうに こどもらはみな帽子を投げた。

幾千もの帽子が 高く高く舞ひ上がつていつた いつまでも青い空へ

それら幾千もの帽子は 入道雲を吸ひ込み 空に溶けていつた。


がらんとして高い。秋空。


  (二〇一八年九月一二日)



自由詩 小さな村で見た Copyright 石村 2018-09-20 11:01:49縦
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