ふたつの命
葉leaf



窓越しに見えた遠くの山嶺は厳しく青空を背負っていた。僕は君という緑を己の緑に重ね合わせて、溶け合ったまぶしい緑を背負っていく。今日、長く患っていた孤独という病が鞘に収まった。孤独は出血性でひたすら喉が渇く病で、幼く傷ついた人間が罹りやすい。だが、今日手に入れた愛という健康は、その価値の分だけ金塊のように重いのだった。

君はまったく水のようだ。僕をすみずみまで満たし、波打ち、きらめき、常に微笑みかけてくる。君といるとき、僕という岩は一緒に液状化して、同じ微笑みを交わし合う。君も本当は岩なのかもしれない。僕と一緒にいるときだけ水なのかもしれない。お互い孤独な岩同士が、愛の原野の上では互いに飛び跳ね匂い立つ水となる。

助けを呼ぶ声がする。それは僕の声でもあり君の声でもある。死にかけた体がある。それは僕の体でもあり君の体でもある。僕らふたつの命、互いに命を与え合うことで生き返った。僕の体には君の命が必要で、君の体には僕の命が必要だったのだ。救急隊はもはや帰還して、僕らは再びゆりかごの中にいる。

僕ら互いに旅の道連れ、それぞれ違った旅路を進みながら、同時にふたつの旅路を歩む。旅の荷物は少しずつそろえては少しずつ捨てていこう。僕らふたつの旅路の過程で、互いの太陽と互いの月を仰いで、それぞれの物語を紡ぎながら、ふたつの物語を織り合わせる。僕らの物語と劇は複雑なプロットを作り上げて、愛という前衛を歌い上げるだろう。


自由詩 ふたつの命 Copyright 葉leaf 2018-09-17 14:27:39
notebook Home 戻る  過去 未来