見えているのに
春日線香
見えているのに見えないふりをしている。うっすらと埃の積もった本棚、弱っていく観葉植物の鉢、皮膚の下の小さなしこり。生活が生活でなくなり、わたしが人間でなくなるのはどの冬の真夜中なのか。水道から流れる水がわざと焦らすようにゆっくりと排水溝に消えていく。ほんのわずかな音も立てずに。
自由詩
見えているのに
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春日線香
2018-09-14 10:50:35縦