入れ墨の女
ツノル


背は低く小太りな体型だが胸のふくらみは予想以上だった。ワンピースの袖をずらすと右肩に刺青が施されていた。
薄暗い部屋で酒に酔っていたのでよくは覚えていないが、観音菩薩のような姿だったと思う。
(まだ途中なのよ。)そう言うと、女は少しこちらの様子を窺った。
刺青をした女性をみるのはこれで二人目だ。もう一人は若いときに入れたような牡丹だった。それが太股の内側だったのか表だったのかは忘れた。ともに一見すれば普通の主婦だろう。しかし驚きはしない。これが背中一面に色あざやかな絵が施されていたならば、少しは肝を冷やすかも知れない。(いまでも彫るのは痛いのよ。)あたりまえだろう。馬鹿なことを聞いたもんだ。
これもあたりまえのようだが、バツ?で子供は三人いるという。(一番下の子は男親が違うの)
介護の仕事をしているという。歳もかなりいっていたが何故入れ墨などをしようと思ったのか。理由など俺にはどうでもいいことだ。
久しぶりに酔った勢いで女を抱いた。笑顔の似合う胸の大きな女だった。たまたまタイミングよく入った怪しげな店で、重たい墓石を軽く持ち上げたようなものだ。
あの夜女は逝くことができたのだろうか。そんなこともどうでもいいことだ。


自由詩 入れ墨の女 Copyright ツノル 2018-09-14 04:02:31
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