乙女たち
ふるる

暑い8月さなか
フラダンスレッスンの見学をしていて
ほとんどがおばあさまなんだけど



ご挨拶
足元や腰
肩から指までの動きが
たおやかでおだやかで
いつまでも見ていられると思った

練習着のハワイアンなスカートもそれぞれに華やかで
白髪にそっと
花飾りをつけた人もいて
皆さん素敵ですね
と隣の見学の人が話しかけてきて
あなたもとっても良い香りがします
と心のなかでつぶやいた

ダンスの中で
船を漕いだり
いとしい人を探したりしていた
波の動きがやっぱり好き

帰り道
焼けたアスファルトに黒い影
横切る黒い揚羽蝶
蝶の見ている世界は
紫外線だから白昼夢みたいなものだろうか
蝶は白昼夢を舞う
夜のとばりのような羽で

分かったのは
フラダンスでは痩せないんだな

寄ったスーパーの袋詰めの台に
マジックで幼い字
りす
すいか

あ、しりとりか……

夏の夜空に輝く月
左下にある赤いのあれは火星
と隣に来た息子が教えてくれた
星たちは教える
私たちを見上げる
地上の誰の胸にも沢山の
叶わない夢が
ふりそそいでいるのだと
切ないのは
そのせいだと

かつての乙女たちは
身体を休めて
眠りの波へ
たゆたいながら
儚い記憶を見ているだろう
いたずら書きの
幼いりすちゃんの頃や
夏の日差しのなか
いとしい人を探すために手を
かざしたことを




自由詩 乙女たち Copyright ふるる 2018-08-31 23:51:09
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