火ぶくれのハクチョウ
田中修子

わたしを壊してとお願いすると
あなたはもうとっくに壊れている、と耳を噛むのね

ひもじくてひざこぞうのカサブタを
食べた記憶をくちづけたら
眉をしかめて吐き出さないで
わたしそのものを

おばちゃんと編んだイラクサをおぼえている
わたしたちほんとうは
きっと尊いものなんだから
はやくチョッキを着て
ハクチョウに変身してここから逃げ出そうね
いっしょうけんめい、火ぶくれになった手

わたしはハクチョウになる前に
悪いお母さんに飢え死にさせられ
はらぺこりんの幽鬼になっちゃった

おばあちゃんはひかる湖のうえ、飛び立てたわ
白いお骨はただのあしあと

わたしがふれたものは
すべて青白く燃え上がって食べられないの
おなかへった
とかなしむふりをすると

あなたはただ全身を火ぶくれにおかされて
完治しないあわれな子どもだ



わたしを目覚めさせようとする男たちが
気色わるく胸元をまさぐる
泣き笑いしながら
カサブタを食むように
舌をのみこんでいった

--

※日本現代詩人会 投稿作品


自由詩 火ぶくれのハクチョウ Copyright 田中修子 2018-08-19 13:26:40縦
notebook Home 戻る