陽の当たる部屋、刹那と箱と
千月 話子

失いかけた
午後の空白から
歌が聞こえる

 「バイバイ」と言っているんだね

とどまらない風が連れて行く
小さな声の始まり
先端が少し冷たい





君のフライングが
僕らの明日に
霧をかけた

 春の雨 細かい飛沫

長い影が いつまでも取れない
長い長い 余白に何を語ろうか





忘れないけど 『さよなら』

表面を綺麗に磨いて
いつでも取り出せる
小さな箱に入れてしまおうか
まだ思い出にならない 想いが
ぐずぐず と 後ずさりする
長く 冷めた 午後





風が飛んで行く
霧が消えて行く
君は  笑ってる?





箱の隅
少し湿った
雫は
塩辛い
雨の跡で


陽の光り
柔らかく
照らし出していた


部屋で
歌ってる
かすれた声を
やがて
乾いた
箱に入れて

軽く蓋を閉めたんだ。





それは





セピア






まだ 生まれたばかりの





少し 明るい・・・。




自由詩 陽の当たる部屋、刹那と箱と Copyright 千月 話子 2005-03-23 22:43:56
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