コウソクのシ
狩心

無限の記号の子供が突然起立して
あと8分でお前は死ぬと言う
爆音が耳元に流れ
身体は震える様に踊り
空中で破裂しそうになる それを
今までの我が尊厳で抑え付け
軌道修正を図る 一体何の為に
死から逃れる為にではなく
死の瞬間まで我が意志で全てを処理し切ったという 証の為に
破裂する身体 走馬灯とスローモーションの中
我が意志はその一瞬を10年間になるまで引き伸ばした
その苦痛の世界に我が分身の胞子を爆弾処理班として産み落とす
光速で滑空する胞子は時間を1秒たりとも無駄にせず
10年間で全ての問いとそれに対する答え
そして全ての大切なものを繋ぎ止め
無限が約束された世界を己の有限とした

コウソクのシは破綻して
散り散りになった我が断片は吸着し
爆発し続ける心臓を取り囲む地表となり
吐く息は大気となり
記憶の奥底に僅かにあった地球という惑星になった

惑星の中にいて
宇宙人の侵略を受けたとしても
惑うことはない
それは私自身だから
全ては無音のダークマターの中に鎮められ
鎮魂歌となるコウソクのシは永遠に訪れさせない
時空を超えて繋がり合う爆弾処理班が
孤立しているものは一切ないと
証明し続ける限り

夜空を見上げると流れ星がひとつ
何年生きてきたか
いつ生まれたかも思い出せない
そう思った瞬間
花火のように現れる物凄い数の流星群 どんどんと増えて
夜空の黒を余すところなく
真っ白に染め上げた
地球のエンジン音が鳴り響く
太陽系を離れて 流星群に合流するのだろう
私は
誇らしかった


自由詩 コウソクのシ Copyright 狩心 2018-08-16 09:18:44
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