真夏の太陽に
こたきひろし

真夏の太陽に眼も火傷した。
もうこれ以上たえられない暑さに気が変になりそうだ。
屋外に出るのは命に危険だと市の防災放送が盛んに注意する。
しかし屋外で働かなければならない我が身は逃げられなかった。

今年は蝉の死骸を何度も見た。蝉ばかりじゃない。鳩が死んでいた。見つけたのは若い女性社員で、スコップはありませんかと私の所にやって来た。普段一人作業をしている私の所に。
見れば塵取りを持っていてそのなかに鳩が動かなくなってゴミの扱いになっていた。
胸が平らで尻に肉感のない痩せた女のこはその足らない部分、真面目で人の良さそうな顔をしていた。
きっとまだ男を知らない体だと余計な想像をしながら、何を言ってるんだスコップなんてあるわけないと、首を横に無言でふったら、女のこは困った様子を見せた。
駐車場の隅の草むらにでも穴を掘って埋めたいんですけど言う女のこに、先の尖った板切れがある事を思い出した。それは捨て場所かなくて人目のつかない所に隠してあった。
私はそれを使って草むらの固い土を何とか掘ると、鳩の死骸をその穴に女のこは無造作に入れた。
私はすばやく土をかけて上から足で踏みつけた。

思えばとても残酷な葬り方だが、何の感傷もなく済ませた。
安堵した顔して自分の持ち場に戻っていく女のこの痩せた尻は作業ズボンのなかに埋もれていた。それが何だかとても可愛いそうに思えた私は、いたって性欲の強い老人に間違いなかった。
私はふたたび一人作業に戻った。

孤独な仕事に戻った私はそれから暫くの間、何故か砂漠に置き去りにされた駱駝のような気分に閉ざされてしまった。


自由詩 真夏の太陽に Copyright こたきひろし 2018-08-15 01:46:37
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