はじめましてお久しぶりです
R
おばんでした。
はじめましてお久しぶりです。
私が私として、
あなたがあなたとして、
互いを認識しあったのは、
もう何度目になるでしょう。
あなたの顔が、声が、においが、
私の中の誰かと一致する、
ような、
しないような。
同一な誰かは存在しないはずなのに、
あなたは私をご存知ですね。
お久しぶりです。
私の願いも覚えていますでしょうか?
いつかの私は言いました。
脳みそのどこか、
縮れた鎖に囚われた箱のひとつ。
玉手箱、パンドラの箱、ビックリ箱。
私が開けるのだから、これは筆箱、
彫刻刀が二本も入っています。
切れ味がよくないだけが取り柄なので、
さあさあ、お逃げなさい。
今までに私とすれ違った人たちのように、
すり抜けたあの日の裾に勿忘草の魂が芽吹くように、
自ら一昨日の夕飯の上に刻みつけてしまうから。
お逃げなさい、遠く遠くの現実へ……と。
それから、
もし、今度また会ったなら、
私を私として認識する前に、
どうか私を忘れてください。
他でもない、私の為に、
どうか忘れてはくださいませんか。
とも願ったのですが、
もうすっかり忘れて下さったようで何よりです。
ごきげんよう、どちら様?