はじめましてお久しぶりです

おばんでした。
はじめましてお久しぶりです。

私が私として、
あなたがあなたとして、
互いを認識しあったのは、
もう何度目になるでしょう。

あなたの顔が、声が、においが、
私の中の誰かと一致する、
ような、
しないような。
同一な誰かは存在しないはずなのに、
あなたは私をご存知ですね。
お久しぶりです。
私の願いも覚えていますでしょうか?


いつかの私は言いました。

脳みそのどこか、
縮れた鎖に囚われた箱のひとつ。
玉手箱、パンドラの箱、ビックリ箱。
私が開けるのだから、これは筆箱、
彫刻刀が二本も入っています。
切れ味がよくないだけが取り柄なので、
さあさあ、お逃げなさい。
今までに私とすれ違った人たちのように、
すり抜けたあの日の裾に勿忘草の魂が芽吹くように、
自ら一昨日の夕飯の上に刻みつけてしまうから。
お逃げなさい、遠く遠くの現実へ……と。

それから、

もし、今度また会ったなら、
私を私として認識する前に、
どうか私を忘れてください。

他でもない、私の為に、
どうか忘れてはくださいませんか。

とも願ったのですが、
もうすっかり忘れて下さったようで何よりです。
ごきげんよう、どちら様?


自由詩 はじめましてお久しぶりです Copyright  2018-08-07 22:39:32
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