水喰み Ⅳ
木立 悟






目をつむってもつむっても
夜は夜に聞こえない
水でできた城が空から
ゆうるりと崩れ落ちてくる


多くの夜が
多くの身体の上に重なり
奥なる声を外に連れ出す
夜を知らない暗がりのうたを


痛みなく
静かに
目についた傷
花の笑み


音も無く祭りは終わりはじまり
また終わりはじまり浪間を漂う
真夜中の一瞬の夏の雪を
跡も無くけだものは過ぎてゆく


川のそばの 大きな建物から
にぎやかな明りと
音のまたたき
だが何処にも人はいない


色 光 音 振動
だがどこまでも匂いは無い
すべてはそうして過ぎ去り
原の夜を炎に描く


子らはみな笑み 光の花
川のそばの建物に夢中だ
空は暗く ずっと暗く
水を流れ 流れつづける




















自由詩 水喰み Ⅳ Copyright 木立 悟 2018-08-07 10:21:27縦
notebook Home 戻る  過去 未来