あのことを
ふるる

何度も言いかけてはやめてしまっていたあのことを
ついに言う時が来た

あなたは苦しむ能力に長けていて
同情を必要とせず
目は見開いて何かを言おうとする

道端に咲く語る草
肩をノックし続ける
私たちは駆け出す
奈落に追い付かれまいと

激しい雨で刺だらけの道行き
映画館まではまだ遠い
前後しながらお互いをかばいながら歩く
お互いの顔も見ないで

すぐにほっとします。

青空に向かい歌い
小首をかしげてありんこを見ることでととのう儀式
付き添いの木は大木になり
枯れ 倒れ 果てた

殺し屋みたいなスーツのあの方は
小さな花を胸に挿して泣くのです

日常に慣れて
たまに哀しい事件が起こって
大勢が手を挙げる
語り手を破壊しなければ
何も語りえないのに

だからお前はもう行くといい
平らな朝日のさす場所へ
俺を置いていってもいい
そしてはるか後
思い出せるのはどこまでだろう
ここまで

さあ、今だ。
これからのことは各部屋で待機してる光の臓器たちが教えてくれる
いつもそうだったように?

困った人を見つめる人々の困った顔
それにしてもこの爽やかな風はどこから吹くのだろう
吹かれながら懐かしいレモンの歌
口笛が吹かれる
あまり上手くないけれど

君にぴったりのきれいな白い靴は見つからなかった
どだい僕は君じゃないからさ
心はうつむきながらも
いつしか人が人を無理に出会わせる
出会いが人をあっちこっちへやる奇跡
に乾杯はしない
感謝もしない
肝心なことは知る術もないが
あのことを言おう
君のことが
好きだ


自由詩 あのことを Copyright ふるる 2018-08-05 10:21:29
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