こころ はんぶん/ブルーノ/そらの
AB(なかほど)


はんぶん

例えば二分の一の確率だけ
の君がいる
それは僕かもしれない
ふたを開けるまで
どちらの君がいるのか
あるいは僕がいるのか判らない
もちろん半分だけの君と僕が
キカイダーかバロムワンかダブルのような姿で
存在しているわけもない
あのかわいそうな猫か
素敵なパンツのおはなしと同じように
感じた瞬間が重なり合うような
そんな
もちろんフィクションでのおはなし

何をきっかけに
生まれてくるのか
ということと
今僕らが誰が読むかも判らない
鼻で笑ってもらえればまだしもの
それらしきものを夜中に書いていることと
似ているといえば似ていて
はるかかけ離れた事象と言われれば
それまでのこと

感じていますか
とときどき問いかける
誰のためにとか自分のためにとか
そんなことではなく
感じていますか
と問いかけている
その心もなにかのきっかけで
ここに生まれてくるんだよ


ちょうど今の季節では
公園でひばりの声を聞いたよとか
虹がかかっていたよとか
笑う僕が
凸凹配位座とかグルーオンとか
って
と笑って話している
そこで
いくらたくさんの君が首をかしげていても
同じようにたくさんの君を愛している
ということを感じていて欲しいけれど
そのふたをあけるまで
どちらの君がいるのかわからないし
わからないままのほうがいいのかとも思う


昨夜は
話せば世界中の人が涙するような思い出を持つ人の
笑顔がとても素敵なことに
少しでも近づければいいと願った




ブルーノ

*  
地球はまわる
ぼくらもまわる
ガリレオ相対性のきれいなこと

**
あの人のように強くなくても
あの人のように正しくなくても
やっぱりダメだと
苦笑いする夜も
ぼくらはやさしい力でつながっていて
たぶん きっと
手のひらの中の宇宙と
はるかかなたの光が同じ時を刻むように

***
生まれて来たのだから
生きてみる
その先は
ひしゃげた銀河や
明日へつながって

****
どこか遠くのことで
悲しい気持ちになれるのなら
手のひらの中の
弱い力と強い力と同じように
ほんの少しのやさしい力で
つながってゆくものがあるのだろう
生きていけるのだろう

*****
約束は言葉にすべきだが
言葉じゃ伝わらない約束があって
それが木漏れ日の散歩の記憶のように
いつのまにかしみていけばいい
のだと思う
それはブルーノの強さだったり
祖父母の笑顔だったり

*




そらの

空を見上げたあなたを覚えている

強いひとになりなさい
と言われたことがある
そのときのあなたは泣いていた
いつしか同じことを僕が言っている
気づくと僕は泣いてはいない
あなたのほうがずっと
ずっと強いひとだったと
いまさらのことのように思う

市場や病院の帰りの
アイスクリームはごちそうでした
お父さんやお兄さんには内緒でした
手をつないでくれました
道端の草で
お守りを作ってくれました
それから
青空を見上げたあなたへ
ひこうき雲の行く先を何度か問いました
ついに本当のことは
教えてくれませんでした


ひとは助け合うもので
約束は守るもので
親祖先は敬うもので
家族は守ってゆくもので
思いは
言葉になったり
ならなかったり
しながらも育つもので
一生は夢のようです
あなたの怖い顔や優しい顔
や悲しそうな顔の
そのまなざしの向こう

僕らの知らない
ひこうき雲の人もまだいるのでしょう


供養のために用いたお盆を
門の外まで片付けに行くときに
ふりかえると無縁仏がよってくるから

身体を固くしながら
お手伝いをしていたことがある

そう教えてくれたあなたは
何度もふりかえって
おぼつかない僕らを見守っていた
ことにも気付かなかった



  


自由詩 こころ はんぶん/ブルーノ/そらの Copyright AB(なかほど) 2018-08-01 12:48:06
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